今期キリンジ2曲目。2000年のアルバム「3」より。

A面5曲目。エイリアンズの直前に収録されています。2013年の兄弟での最後のライブで最後に演奏された曲だそうです。

作曲は兄、堀込高樹さん。

反則負けでしか存在感を示せない悪役プロレスラーの悲哀を歌った曲。引退を決意するも、最後に息子にいいところを見せようと、八百長シナリオを出し抜いて、ヒーロー役に勝ってしまうという、なかなか深みのある歌詞。キリンジファンには結構人気の曲です。

レゾナンスの効いたシンセの音によるほのぼのとしたサウンドで、一見コミックソング的な印象も受けるのですが、実はめちゃくちゃ複雑な曲。毒のある歌詞と相まって噛めば噛むほど味が出るという仕上がりとなっています。

というか、そもそも兄、高樹さんの曲はいつも複雑なコードワーク故か、ひたすらマニアックな側面は否めません。また、プロデューサーの冨田さんの志向もこれに輪をかけてより強力になっていますよね。

で、聴いていて、演っていて、どうしてもスティリー・ダン臭を感じざるを得ません。思い浮かんだのが「Hey Nineteen」。

改めて比べて聴くと、表面的にはそれほど似てはいないのですが、なんだろう、同じ臭いがしますよね。おそらく、淡々としたテンポ感と、コードへのテンションの振りかけ方なんだろうと思います。まぁ冨田さん、ドナルド・フェーゲンのアルバム「ナイトフライ」の研究/解説本を書いてるくらいですからねぇ。

曲の土台はエレピで、オーケストラは使っていないのですが、シンセ/キーボード類でいろいろな音色が使われています。

複数の音色を同時にレイヤー的に使っているように聴こえるので、はっきりと聴きわけるのは困難ですが、レゾナンスの効いたポリシンセ、はじけるような音、オルガン、リード系、ストリングス系と実に多彩です。